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音声認識ソフトがdyslexia(難読症)を救う

音声認識ソフトがdyslexia(難読症)を救う
IAN AUSTEN
New York Times 2001.7.19


アンドリュー・ガナットは5月に高校を卒業し、秋には大学入学が待っていました。大学入学は誰にとっても人生の一大事ですが、彼にとっては特にすばらしい出来事です。というのも彼は、高校2年の時にLDの一つの症状であるdyslexia(ディスレクシア:難読症)だと診断されていたからです。

ガナットが持つ問題は単語の綴りを覚えることでした。彼は全ての文字を1つ1つ書くことはできるのですが、それを組み合わせて単語にして書くことが困難なのです。

ガナットは学習上に困難を持つ生徒の教育を専門としている特殊学校に5年間寄宿生として在籍していました。そのことが大学入学の大きな助けとなったようですが、それに付け加えて、彼は最後の3年間で成績と行動とをグンと引き上げる別の方法を発見しました。Dyslexiaの大人も子供も使っている音声認識ソフトによって、自分の意見や考えを容易に紙面で表すことができるようになったのです。

そのソフトは彼の成績を改善しました。それまで彼は自分の能力に比べてとても低い評価を受けていると感じ、フラストレーションを感じていましたが、そのソフトによって他の生徒と同じレベルになったのです。
LDの研究者である、フロスティングセンターのマーシャル・ラスカインド博士は音声認識ソフトがdyslexiaの人にとって効果的であると主張しています。文字で自分の意思を表現したい場合、この偉大な武器がdyslexiaの人の自尊心に肯定的に影響を与えてくれます。このソフトのおかげで生まれて初めて「ラブレター」を書けたという人もいるのです。

Dyslexiaの生徒にとっての音声認識ソフト使用の効果を10年間研究し、その結果について4つの論文を発表した後、ラスカインド博士は、「音声認識はdyslexiaの人々のコミュニケーションをより円滑に進めるだけでなく、その症状の克服にも役立つ」と結論づけました。

音声認識技術を30分ほど使っただけの子供にも、読み、読解、綴り、理解の領域での改善が見られました。これはまだ仮説段階のものですが、とても意味ある結果だとラスカインド博士は述べています。

Dyslexia人口が音声認識ソフトを使用することによって、ソフトウェア会社も大きく動くこととなります。IBM社で人間の言語技術を研究しているディビット・ナムーは、このことで音声認識に関する新たなビジネスが開拓できると感じています。彼はdyslexiaのソフト使用者からもらった手紙を見て、それはとてもすばらしいものだと感じたのです。

ソフトウェア会社が、音声認識ソフトを改良して携帯電話のように普及するようにし、自動車内の付属品としてハンズフリーでも使いやすいようにしている間に、その技術は意図せずとも学習に困難を持った人にとっても効果のあるものとなっていたのです。

あまり知られていないことですが、このソフトは麻痺やストレス障害からタイピングが難しかったりできなかったりする人々を援助してきました。今ではDyslexiaの人々も同様に助けられているのです。

Dyslexiaは学習困難を表す一般的な単語で、書き言葉や文章、段落の理解に対する困難を引き起こします。読み、書き、綴りの困難の原因だともいわれています。Dyslexiaの生徒は書く時と話す時の語彙に大きな差を持つ傾向があります。自分の考えを明確に述べられる生徒が、それを書くときには使用できる単語がとても限られたものになってしまいます。コンピューターにレポートやテストの解答を書き取らせることができれば、彼らはその言語能力を最大限に発揮することができるのです。

今までのところ、dyslexiaの人の音声認識ソフトの使用は限られたものとなっています。ラスカインド博士は教師等から出される反対意見に対しての応答がまだ充分にできないと述べています。

このソフトは万能薬というわけではないので、フラストレーションを感じる生徒もいるでしょう。しかし、この補助的な技術で問題が全て解決できると思っている人がとても多いのです。

スーザン・バートンは、以前にマッキントッシュ社でソフトの開発をし、今ではdyslexiaのコンサルタントとして働き、彼女自身が開発したdyslexia用の学習プログラムを載せたウェブサイト(www.bartonreading.com)を運営しています。彼女は一般的に教師は生徒にそのようなソフトを使わせたがらないと述べています。教師にそれを受け入れてもらうことが大きな問題なのです。彼らは全ての生徒が全く同じやり方でやらなくては公平でないと主張しますが、それは公平さの間違った認識とdyslexiaについての誤解からくるものだと思われます。

中学校で音声認識ソフトを使ってみたところ、特殊教育担当者はすでにそれについて細かく理解していて、それを手に入れている人もいる一方で、通常学級の教育者はそれに理解を示さず、「そんなことでは生徒は一生書くことができない」と言っている者も多くいました。

ラスカインド博士がdyslexiaとコンピュータを結びつけようと初めて考えついたのはカリフォルニアの大学で学習困難者用のプログラムを作ろうとしていたときでした。1991年に彼は、学習困難を持つ人々のための研究と治療のセンターであるフロスティッグセンターのスタッフのエレナ・ヒギンズとともに研究を開始しました。彼らは、Dragon Naturally Speakingソフトの先駆けとなるDragon Dictateを使ってレポートやテストの解答を書き取らせているカリフォルニア州のdyslexiaの生徒に焦点を当てて研究をしました。

彼らは話すことに不自由はないのですが、それを紙面上で表すことに困難を示していました。

その時代の最新技術であったDragon Dictateは、技術の面からいうと文句無しにすばらしいというものではありませんでした。しかし、それを使っていた29人の生徒が出した結果はとても印象的なものでした。彼らが音声認識ソフトを使って書いた文章は、学習困難を持たない生徒のものと比較しても差異はみあたらなく、その文章の質はそれまでのものよりも著しく優れていたのです。

このソフトは読みのスキルにも効果があるようです。1年間これを使用した生徒達は読みと綴りの能力が向上しているように感じたそうです。ラスカインド博士はこれらの生徒達が9歳から18歳になるまで研究を続け、彼らの読みと綴りの能力が向上しているという印象が正しいものであることを実証しました。

このソフトのプログラムは、まず単語を発声し、次に映し出されたその単語を見るもので、これはdyslexiaの子供達が昔からやってきた方法なのです。

前述した18歳のガナットは、高校1年生のときに音声認識ソフトを使い始めました。最初は苦労していましたが、今の彼の状態はそのソフトの有用性を証明したものとなっています。IBMの音声認識ソフトであるViaVoiceを使ってレポートやテストの解答をまず下書きします。その後、それをMicrosoft Wordに貼り付け、見直して間違いを正すのです。

今年、彼はペンタゴンの設立についての15ページにわたる歴史のレポートを書き上げました。そこには綴りのミスが1つもなかったため、先生は最初それを彼が書いたと信じることができなかったそうです。彼は今ジョンソン&ウェールズ大学への入学を希望していますが、書く能力は大学レベルになっていると感じています。
ソフトを変えて彼の読み能力は改善されましたが、綴りの能力はそれほどには上がらないと感じています。
ガナットの母は、彼がよこすE-mailが大きく改善されていることに気がついていました。以前は母音の位置がおかしかったりしたのですが、今では問題ないそうです。

ブレット・ジャーミーは学生時代、dyslexiaの症状を軽減するために音声認識ソフトを使うという手段がありませんでした。彼は手書きで何度もレポートを書き直し、その後それを1分間に80単語をタイプすることができるガールフレンドに渡すといった、非常に骨の折れる作業を経て大学を卒業しました。その後食品メーカー会社の副社長となったのですが、単語内の文字の位置を間違えてしまうため、5ページ程の技術文書を何日もかけて作成することにフラストレーションとプレッシャーを感じていました。

今から約4年前、彼は初期のバージョンのDragonソフトを試してみました。最初は時間がかかって使えないと思っていたようですが、1年後に出た新しいバージョンが彼のその考えを覆すこととなりました。今ではより技術的な5ページの文書を1日もかからずに作り上げることができるそうです。

このプログラムが完璧であるというわけではありません。辞書にない言葉を書きとらせようとしても、このソフトは動きもしないのです。

IBMなど大手のコンピュータ会社の技術的な進歩は必ずしもdyslexiaに有効とは言えません。初期の音声認識ソフトを使う際に、使用者は1単語1単語ゆっくりと丁寧に発音しなければなりませんでした。発せられた単語はその後少し経ってスクリーンに1単語ずつ現れてくるのです。現在のソフトを使う際には、使用者は普段の会話のスピードで話し、話された言葉は次々とスクリーンに現れていきます。

Dyslexiaにとって最も有効な音声認識ソフトはどういうものかという研究をしているラスカインド博士は、現在のソフトは、生徒にもよるが、速すぎて情報量が多すぎると述べています。

現在、dyslexiaなどの使用者を困惑させず、また、読み書きが堪能な使用者も満足できるようなソフトの開発が必要とされているのです。



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